*かつて存在した君へ
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※アテンソンヌ
・思い付きで書いた毎度の駄文
・史実をもとにしているかもしれない
・シリアスかもしれない
・興味本位で調べたら重くなっちゃったかもしれない
・お腹空いちゃったかもしれない
「……そうですか、人間が…」
1945年。世界を震わす戦争が終わった後。
とある東の島国、そこにある屋敷の一室で、声が響いた。
黒髪短髪、袴を着た青年は、縁側で正座をし、
日を浴びながら後ろに居る青年を見つめる。
黒い軍服に身を包み、赤いメッシュが特徴的な青年。
手に付けた黒い軍手を再度付け直しながら、頷いた。
「あぁ。そう決まった。」
「…私の、埋め合わせは」
「道徳が引き継ぐそうだ」
その言葉にゆっくりまばたきをし、外を見つめる。
やがてまるで全てを受け入れ、何かを覚悟したかのように、こう呟いた。
「私はもう、不要となったのですね。」
「聞いたで、歴史から。…役目、終わったんやって?」
青年もとい歴史が去った後、一人日光浴をする青年に、
着物を着た女性が寄った。
「古語さん…」
「うちと一緒やな。」
ぽつりこぼれた言葉に、古語と呼ばれた女性はニコッと笑う。
けれど青年は、首を振った。
「でも、私と貴君では違いがすぎます。…貴君はこれから先も、ずっと記録が残っていて、隠居した今も消えずにいる。私は…やがて、時と共に忘れ去られるでしょう。」
「………」
「それに、もう役目は終わりました。貴君ら言語教科と違い、役目を終えた瞬間、記録が残っていようと私は消える定めなのです。」
頭を下げ、悲しそうに呟く。
「…修身くんは」
「はい」
「寂しゅう、あらへんの?悲しゅうは、あらへん?」
その言葉に、修身と呼ばれた青年は少し目を丸くした後、
苦笑した。
「本音を言えば、寂しいし、悲しいですよ。まだ…生まれて55年しか経っていないのに。時代かなぁ……」
「で、そやけど!なんぼ時代やさかいって消えることあらへんで。まず役目を終えさせたのは君が生まれたこの出身地の人達とちがう、異人はんやろう?」
「古語さん…」
慌てるように言う古語に、修身は少し悲しそうな顔をした。
「確かに、この出身地…この国の人達が決めた事じゃない。でも、人間が決めた事には変わらないでしょう?」
「そやけど…」
すると修身は古語の肩に手を置いた。
「大丈夫。私の後は、道徳さんが引き継いでくれるそうです。それで…日本語さんは?」
「……」
そう問うと、古語は気まずそうに目をそらした。
「日本語は…ずっと、部屋に閉じ籠ってる。」
「そうですか…」
古語はハッと乾いた笑いをこぼす。
「けったいな話(=おかしい話)やんな、悪いのんはあの子ちゃうんに。全てを決めた元凶は、この出身地の人達やのに…。なんで、なんで君が、あの子が!罪悪感を覚えて、責任を負わなあかんの!?」
心の叫びともいえる言葉が、
声が古語の口から、喉から、心の奥底から出る。
「そんなん、理不尽やんな…」
「古語さん……」
修身の脳裏には、かつて英語から聞いた言葉が思い浮かんでいた。
『おかしな話ですよね、悪いのはあの子ではないのに…全てを決めた元凶は、あの子の出身地の人達なのに…。なのに、なんであの子がそのせいで引き離されなければならないのでしょう。でも、それはきっと…』
「私達教科は、国と一心同体だからですよ。」
「修身くん」
「悪くなくても、関係なくても、引き離されたり、こうやって…役目を終えなくちゃならない。例え望んでその役目に生まれたわけでなくても。でも、私はね。」
この役目に生まれたなら、そう通したいって思うんです。
「…ねぇ」
「はい」
「ほんまに、消えてまうの?だって君は、君という教科は、他の国にもあるやん。英吉利(イギリス)、仏蘭西(フランス)…それに亜米利加(アメリカ)かて」
「全て、道徳さんに変わるそうです。」
その言葉に古語は一瞬止まった後、そやな、と下を向いた。
「そやな…今挙げたもの…何、全部君を消すことにした国とちがうか。そんなん挙げるなんて、うち…」
「気を、落とさないで下さい。貴君、言ったでしょう。悪いのは貴君じゃない。…私は、私らしく生を終えます。」
その言葉に、古語は少し顔を上げる。
「私は…個人主義や自由主義、物質主義の考えが増える中で、いかに不良少年少女を減らすかが課題となったことから生まれた教科です。そして、軍国主義の教科であり、もう、この世界には似つかわしくない、古い教科です。」
西で新しい教科が生まれたそうですね、と修身は言った。
「人間が平和を祈って生んだ教科だそうです。…素晴らしい。彼女ならきっと、きっとよりよい世界を作ってくれるでしょう。だから古い時代に取り残された老いぼれはさっさと消えます。」
「やったら、やったらうちだって老いぼれやで。伊達に1000年生きてへんのやで?そないな私生きてるんやさかい、君が消えのうったって(消えなくったって)…」
修身は続かなかった古語の言葉へ、にこやかに笑った。
「貴君はまだまだお若いですよ。その証拠に、沢山記録が残っているでしょう?若いものほど、記録が沢山残っているものです。私は役目を終えた。5年、10年…その頃にはすでに忘れ去られているでしょう。今は1900年代…果たして2000年代の子供達は私を知っているでしょうか?大人達が教えてくれるでしょうか?本に、一文字でも載っているでしょうか?載っていてもそれはきっと、意味であって"私"ではない。私という教科はもう……忘れ去られていますから。」
「ほんでも、せめて一緒に、消えるまでは暮らそ?いける(大丈夫)、きっとまだ時間はあるさかい…!」
必死に訴えるその言葉に、修身はただ静かに首を振った。
「言ったでしょう、古い時代に取り残された老いぼれはさっさと消えるって。今この身が消えぬうちに、私は私の生を終えましょう。」
その言葉がどういう意味か。
若いとはいえ"古い時代"の一員である古語には、その意味がわかってしまった。
「あかん…あかんえ修身くん。それだけは、絶対にしたらあかん…!」
首を段々と速く振り、絶対にダメだと古語ははんば叫ぶように言う。
けれど修身はただ、ただ笑うのみだった。
「大丈夫です。――"まだ"、死ぬ気はありませんから。」
それから10年後。春の桜が咲く夜、午前0時前。
屋敷の一室で、修身は静かに目を閉じていた。
「(もうすぐ…もうすぐ変わる。)」
修身という教科から、道徳という教科へ。
この10年間、数回、道徳と話した。会った当初は憔悴しきっていた彼。
きっと彼は、自分のせいで自身が消えてしまうと思っていたのだろう。
「(…大丈夫、貴君のせいではありませんよ。)」
うっすらと目を開け、そう心中で呟く。
さぁ、そろそろ、自分の身体が消える時間だ。
「(ならば、最期は安らかに)」
自分で選んだ、死に方で。
「―――修身?」
「…地理か」
西洋の文化がにじみでるとある大きな白い家。
朝日の登る様子を見ながら、歴史はふと後ろに感じた気配に対し呟いた。
「今日は世代交代の日やってね」
「…そうだが」
「……その様子を見るに、なんや、もう知っとったんか」
ふ、と笑う地理に対し振り向く歴史。目元は少し赤くなっていた。
「今日朝未明、書写が修身の家を訪ねたんよ。世代交代の日。修身は人間によって消され、その埋め合わせは道徳が引き継ぐ。身元を心配した書写が訪ねたところ、もう居なくなっとった」
「…けれどそれだけじゃなかった、だろ?」
そう歴史が言うと地理は肩をすくめる。
「修身の部屋で、日本刀が見つかったんや。出身地のお偉いさん…なんやったっけ?王サマ?から貰った、修身がとっても大事にしとった刀。それだけがただ落ちとったって。」
「…それが何を意味するか。所詮推測に過ぎないぞ、地理。もし万が一のことがあったとしても、教科が消えてしまった場合、血も、体も、跡形もなく消える。それに、消えるまで俺達は不老不死だ。…アイツが、アイツが刀を使っても、死ねないだろうな」
「だから消える瞬間に使ったんとちゃうん?ま、兄ちゃんが言う通り消えてしまって証拠も何も残らない以上、うちらに分かることはなにもないわぁ。だから……」
安らかに逝ったって、考えてやるのが一番ええよ。
「…また一人、逝ってしまったな」
「ホンマやよ。年長者のうちらを置いて若いモンはどんどん…理不尽すぎるわぁ」
「地学に当たるなよ?」
「当たりゃせんよ!ただちょーっとつっつかせてもらうだけ」
「お前な……」
「何してるんだ?姉上」
「んー?お墓。」
ざくざくと庭で石を彫る古語に、書写が声をかける。
「姉上…」
「あの子かて一応ここ生まれなんやで?そやさかい還って来てもええ思うんや。…きっと、ここの出身地の人達がして、故人還って来るみたいに。きっと夏には還って来てくれるやん。そのためにはやっぱし還って来るための物(墓)が必要やろう?まぁ当日はきゅうりやらなすやら必要やけど…痛っ!!!」
「あーあー慣れない事するからですよ母さん」
「だってぇ…」
わーわーと庭で騒ぐ親子をよそに、書写は床の間を見る。
そこには日が当たりキレイに光る刀があった。
そしてそれをじっと見る道徳。
「…また、見送る側になってしまったな」
「そうですねぇ~…。」
「お前はせいぜい頑張れよ?」
「うん。彼の分まで、いーっぱい頑張らせてもらいます~。…彼が僕を見て「譲ってよかった」と思うぐらいに」
「あぁ、その域だ」
二人は、顔を見合わせて笑った。
どうか…どうか、見守っていてほしい。
一人一人逝くの悲しいな普通に...
修身さん...😢😢😢
お皿
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世代の移り変わりって行ってもなぁ……こう、こうしてみると……来るものが……()
はぁ……やばい蒸発しそう(((
イカノシヲカラ
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ノレムン
それを歴史と地理さんはずっと見てるわけですがねぇ…。
国語さんは勿論、書写さんも……。
イカノシヲカラさん
塩にはなるなよ…
世代交代には抗えない()
しょぅゆ。
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素敵なことだ事(?
最後の言葉が涙を誘うんですが??(
sizuki006
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悲しい、悲しいよ……っ
というか、修身っていう教科があったのか……初耳学
あたおかほっとこーき
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だから修身さんも「自分を覚えていないでしょう」って言ってたのよ…
しょぅゆ。
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悲しい......蒸発した......(蒸発する音)
でも確かに修身ってそんなのもあったらしいね、ぐらいの認識だもんなぁ.......
見送る側も辛いよこれ長生きしてる教科たちはその分見てきてるのかな......
bearsaka
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多分国語さんが一番多いかも。
年齢的には歴史さんが一番見送ってるけどさ、
国語さんは言語っていう最も消滅しやすい教科を
身内に大勢抱えているわけだから…。
しょぅゆ。
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