カイザー日記 5/24 曇り
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5月20日の渡部さんの話⑤
「岩本亮平は寝たきりのまま、刺された。・・・・・・・・・・・それでも、やっぱり死ななかった。
それどころか、それどころかよ。渚さんにとって、さらに悪い方向に。」
渡部さんは少し震えてた。僕も何故か寒気がしてきた。
「・・・・・・・・・お腹を刺された刺激で、彼は目覚めてしまったのよ!」
背筋に悪寒が走った。僕はすっかり渡部さんの話に聞き入っていた。
「薬の後遺症なのかはわからないけど、彼は目覚めたとき、自分が誰なのかも分からない状態だった。
そこでね・・・・・・ねぇ。渚さんの事を軽蔑しないでね。あの人は娘を愛しすぎていただけ。
その事をようく胸に刻み付けておいて。すべては、愛する娘の為の行動よ。それだけは、覚えておいて。」
わかってます。だから続けて下さい。渡部さんは深いため息をついて、首を何度も何度も横に振って、言った。
「放心状態の彼に向かって・・・・・・渚さんは・・・・・・・・・・・・渚さんは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・ずっと、恨み言を言ってたのよ。早紀があんな事になったのは、アナタのせいだって。」
渡部さんは喋るのも辛そうだった。歯をキリっと食いしばって、目には涙をためて・・・・
「それで、それでね、彼は何度も『早紀』という名前を聞かされて、そのせいで、そのせいで彼は」
渡部さんの目から一筋の涙がこぼれ落ちた。
それが自分の事だと思ってしまって・・・・・・自分の名をサキだと思いこんでしまったのよ・・・・・・・・・・・。
「彼」が「彼女」になった瞬間だった。
なんて、なんて皮肉な結果なんだろう。妹は自分を兄だと思いこんでて、その次は兄が自分を妹だと・・・
呪われてる。これが呪いじゃなくて何だって言うんだ。虫だ。虫の呪いだ。
虫と呼ばれた亮平さんの呪い。今のあの人は虫じゃない。サキさんだ。「虫」は死んだ。その呪いだ。
「そのあとは、流れるままよ。渚さんはもう抜け殻同然。全てを諦めて、『彼女』に話をあわせるようにしたの。
当の本人は色々理由を付けて父親の病院に移された。こうして父親の監視のもとで、生き続けてるってワケ。」
呪われてる。僕はそう呟いた。
渡部さんも聞こえたのか、すっと顔を上げて僕を見た。
「そう、呪われてる。この呪いからは誰も逃げられない。もし、解放されてるとしたら・・・・それは、死ぬ時・・・ね。」
僕は目をつぶってしばらく頭の中で渡部さんの話を整理した。
ああ、どう考えても呪われてる。「呪い」は便宜的な表現でしかないけど、これ以上良い言い方は思いつけない。
僕も、この呪いの中にいるんだろうか。渡部さんは、呪いの中で一人きりになるのが耐えられず、僕を呼んだ。
そして僕は・・・・・ああ、こうして渡部さんの話を聞いてる時点で、十分巻き込まれてるんだろうな。
僕は知らない間に泣いていた。気付いたら涙があふれてて視界がぼやけてた。
渡部さんも僕が泣いてる事に気付いたらしい。目を拭って彼女を見ると、またあの寂しそうな顔になってた。
少しだけ、笑って。
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