【ネタバレ含】アリスとテレスのまぼろし工場感想

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最高ランク : 7 , 更新： 2023/09/18 8:29:13

最高に神映画でした。
たぶん今年観た映画でこれが一番になりそう

ネタバレ含むので行空けます
スーパー雑文章

ほんまにえっっっっっっぐい

誰かの心を(踏みにじる自覚をはっきりとしながらも)踏みにじり、自分の幸せを手に入れて、手に入れた幸せを幸せとしてしっかり味わう

ある意味最高に自分に正直で最高にえぐいよ

おもに佐上睦美のことを言ってるんだけど

ほんとにねこの子の生々しい造形が素晴らしすぎるんだわ
終盤、五実を電車で送り出して正宗だけ降ろして自分の本音を五美に伝えるシーン
"でもね、正宗の心だけは私のものよ(うろ覚え)"
えぐすぎるやろ
五美からしてみればもうあのシーンで他に移動しようが他の行動の選択肢がない(というか電車に乗ることに自分も同意してたし)
その時点で勝利宣言みたいのを五美にするえぐさ
嫉妬、愛情、羨望、諸々の感情がある種自分の分身だから多分どれも同じくらいのベクトルで大きかったんだろうなぁと
そして正宗はあの場の二人の会話を多分最期まで知らないで死ぬだろう

"未来を五美に託す"という想いは睦美にも正宗にもあったろうけどその含蓄が両者で圧倒的に違っていて、あれ以降の正宗がどこか馬鹿正直な人間にみえてしまうのも事実

後個人的にトンネルを抜ける→五美が現実世界に帰還するは睦美の出産のメタファーだと思っています
その直後に草原で睦美が「聞こえる」と呟いたのは、我が子の声を一番敏感に感じ取れたのが母たる自分ということだろう
後その前にはなるけど坂道に飛び出して正宗と転がり落ちて、痛い、出血を描写するシーンここはかなり複合的な意味合いで、世界の実存度合いが(一時的にかもしれないけど)より高まったということ、出産の痛みもかけてるとかもかけてると思う

いやほんとね
なんかお話全体にすごい性的なにおいがずっと漂ってるの
婉曲的でもあるし、直接的にも描く
正宗と睦美のキスシーンの生々しさと文字通りのエッッッッッ！！！！！さもやばかったこれもうセッ◯スだろ
エ◯アニメをみているのかと思いました。
白状するとふつうに興奮しました、股間にきた。五美が正宗のお顔をprprするシーンとかもやばい。

後えぐいのが失恋の痛みを知ったことで消えてしまった園部ちゃん
正宗と睦美は両想いが明らかになっても消えることもなかったし、あの世界では元から"正宗×睦美"のCPが確定してるんだよね物語の成り行きとかじゃなくて設定レベルで成立してる
なので園部ちゃんは正宗を多少意識し始めただけでも(変化の兆しを見せただけでも)消滅がかなり確定に近づく
一方同じかそれ以上の失恋の痛みを見せつけられる五美は消えない現実の世界の人間だから。ただしそれゆえに園部ちゃん以上の脳破壊を味わうことになる…五虐がえぐい、えぐすぎるマジでこんな話考えつくのえぐすぎる、人の心ないんか？(正直、観てる分には最高に性格悪すぎて…最高)

睦美の性格悪いポイントは序盤から出ていて、正宗が睦美に対して意識的に態度を悪くする自分を見透かす→嫌いだが、”意識する”が故に嫌い→”意識する”が、興味、好意の裏返しだと知っている→正宗は自分が好きだと察する
この感情を基に”あえて”自分のパンツを露骨に、正宗に見せる
これ男性（正宗の）心理からしたら純粋に”パンチラできた！”ていう本能的な喜びはあるかもだけど
それ以上に”自分の心理を見透かされた、プライドを傷つけられた”という悔しさが芽生えてきてだから正宗くんもカッとなっちゃったていう描写だと思うんだけどめっちゃハイコンテクストすぎるし男女心理の描写の解像度高すぎて最高なんでそんなに両者の性的心理を描写するの巧いんだまじでえぐい、きもい、生々しすぎる、という喜びしかない邪悪なパンチラだと思いますマジで。

・”セカイ系”のフォーマットの使い方がめちゃめちゃ上手い
しかも（SF的とか科学的な）理屈的なものをほぼすっ飛ばして簡略化して、”工場で事故が起きた”→見伏だけが独立した町として成立する非現実空間となってしまった
で作品世界＝見伏という箱庭の世界て明確にするの潔かったし、
で、そうやって異世界を確立したから
→その世界では人間の心理の”変化”が起きると消える→変化は悪、不変が正義という暗黙の了解が成立するようになるというロジックも面白かった
”自分たちの恋愛的な心理の揺れ動きが世界の存亡に直結する”セカイ系の話の問題点って、”セカイ”って文字通り地球規模で広いから、そんなちっぽけなことでどうこうなるかよ...とか、物語によってむしろ世界全体の解像度の低さ、チープさ、作り物感の印象を与えてしまうという問題点はあったけど（エヴァとかもそういう指摘がある）、この作品は最初から”箱庭の別世界なんですよ～”ということを明示している。で、別世界だからその世界なりのルールがあるんすよ！という潔いロジックも提唱されるという。マジで独創的だと思う。
...なんだけど、作中の人物は皆 ”人生のある時点で”見伏の世界で生きることになったので、現実世界の倫理観も持ち合わせている。だから、ある程度生活感のリアリティがあって、ある程度のファンタジックさも伴う。ただ作中で唯一佐上パパは元々倫理観や共感性の箍が外れているような人物なので、だからこそ倫理的ロジックが（実は）通用しない見伏の世界においてはむしろ適合して、実権や発言力を得ることに成功している。ていう”現実（僕らが生きるこの世界）だったら”ファンタジックに思える人物も、むしろ見伏の世界ではある程度説得力を持つ人物造形になっているのもマジで巧いと思う。コメディリリーフにもなってたしいいキャラクターだったな個人的には。ただ嫌みったらしさの塩梅は多少人を選ぶかも。

・あのラストで”未来へ～♪未来へ～♪”て熱唱する中島みゆきのラスト
めちゃくちゃシニカルでいいよね..............
けど間違いなくこの映画の為に歌われた歌だからほんとに刺さるんだ...
最後、現実で見伏の工場を訪れた五実？が「私の初めての失恋...」て言ったり
工場には殉職者らしき人々の名前と「ありがとう」が綴られていたり見伏世界の人々（沙紀（五実）の父母たる正宗、睦美も含まれる）が（工場が廃墟化してずいぶん時間が経っていることもそうだけど）もう誰一人生きていなさそうなことが示唆されていたりと
明確に”未来へ”生きることができるのは五実だけというのもかなりシビア。

・五実というネーミング
なんか現実とか”It's me”とか実存に関する言葉が由来なのか？（もちろん作中で正宗があの空間？の壁掛けの文字？を目にしてつけた名前なのは承知の上でかいてます）と思ったけどとくに手がかりを探す等はしておりません...

・正宗ママ「わたしはいい母親でいたいの」←→正宗叔父「きみをいい母親ではいさせない」
この辺りの描写もイイ
ママ：いい母親でいたい（正宗叔父へ寄せる想いや、気持ちが傾く余地はあるかもしれないが、正宗パパ意外との男女の関係をいっさい持たない、正宗にはそれを見せまいとして、女ではなく”正宗の母”という自分の社会的役割の優先を自覚した発言）
叔父：正宗ママが好きで、自分に振り向かせたい（いい母親ではなくしたい、女と男の関係にしたい）見伏の世界崩壊はママを振り向かせるモラトリアムすらなくなってしまうし世界崩壊も防ぎたい
うーんいっすね。なんか叔父さんの本音がどこか独りよがりな気がしてくるけど行動自体は共同体の益になってるという辺りも男性性のそれって感じでいいな...

・”いたい”の使い方
「この世界にいたい」、「（恋で）心が痛い（けど甘い痛み）」て叫ぶ原ちゃん、その”いたい”という概念をどちらも五実に教えるけど五実側はむしろ”この世界にいたい”→いられません、”心が痛い”→甘いどころか正宗と睦美の濃厚なキスを目撃してしまった瞬間の心の痛みというか最終的に”失恋の痛み”と独白してるしどっちも正反対のニュアンスで五実に降りかかってるのがもう最高に五虐でえぐい

あと、これがMAPPA初のオリジナルアニメ映画らしいですね。こんなに露骨に人を選ぶような、かなり恣意的に、人によっては悪意的にすら捉えられるかも知れない人間心理をえぐり出すような作品が処女作になるの、攻めまくっててほんと草いやもう最高でしょ非常に邪悪で最高や！！！

あれちょっと待てや........”アリスとテレスのまぼろし工場”のアリスとテレスって作中一切出ないワードだったぞ...？（水星の魔女の”水星”要素並に空気化してましたね...）
いやわかるんだ、”エネルゲイア”という単語が作中でも使われたようにアリストテレス→エネルゲイア→”いま、この瞬間を大切に生きる” というテーマを扱っている辺りがタイトルに関連しているというのはわかるんだけどアリス”と”テレスっていう造語要素is 今思えば何だったんだ...まあ面白かったのでオッケーです

久々に大いに感情をぐちゃぐちゃにさせられました。
やっぱり岡田磨里作品を...最高やな!!

ナオ

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F外からコメ失です~~~😳💕
「アリスとテレスのまぼろし工場」というワードについ反応してしまいうろぐ引退勢にも関わらずいいねしてしまいました...!!CM等で作品PVを目にすることが多く気になっていたのですが、近くに映画館がないため小説版を読んでいた者です😿💧
タイトルの「アリスとテレス」の造語部分は私もずっと気になっていたので、ナオ様の投稿を拝見して腑に落ちるところがありました~~!!🙇‍♀🙏✨五実ちゃんのお名前の考察についても自分自身では気が付きませんでした...👉👈💦
やはり岡田麿里作品はいいですよね...!!劇場版だと更に迫力が増すといいますか... 私も劇場で動いている睦美ちゃんたちを観たかったです🥲🥲🥲
長々とコメント失礼しました🙇‍♀⤵

鳥羽
2023/09/17 12:51:56 違反報告リンク

鳥羽様＞
コメントありがとうございます！！嬉しいです。
うあ～そうなんですね；自分は行きやすい場所にいるあたり恵まれているのかも、、と思ってしまった。。。

なんか妄想入ってるような考察まがいでちょっとお恥ずかしいですが；感想いただけてありがたいです！

後、「アリスとテレス」の部分はパンフも読んでみた所岡田麿里氏が子供時代にアリストテレスについての授業で触れた際、周囲が”アリスとテレス”って呼んで茶化していた思い出があってそれが氏の中では面白くて印象的でいつかタイトルに使いたいと思っていたみたいなことも書いていました。

純粋な感動的な泣きから今作みたいに心をえぐるところまでほんとに個人的に凄い刺さる作家さんでやっぱ自分も好きです、！小説版自分も気になってるので読もうかな。。

ナオ
2023/09/18 8:37:22 違反報告リンク

だいぶ前の投稿に失礼…🙇‍♀️
アリスとテレスって題名なんだけど、RADWIMPSの「ソクラティックラブ」っていう曲があって、そこに出てくるっていうのを言いたかっただけです。岡田さんの記憶的なのが由来なのは分かったけどなんか関係あるかなと思い…
ちなみにだけど「ソクラティックラブ」普通にかっこよくて良い曲なので聴いて欲しいです(は)

ユキネコ
2023/11/13 10:14:27 違反報告リンク

いえいえ！！コメありがとうございます。
おおおーーよくぞ見つけましたね！！

影響があったかどうかはちょっと僕が調査不足の為なんともですけどワンチャンはありますね、、！
それはそうとこの曲聴いてみましたが個人的にかなりアニメになぞらえて想像することできてけっこうエモくなりました...!!!!男女っていうテーマがめっちゃアリスとテレスだ...てなった... いいものしれましたありがとうございます～～～～！！

ナオ
2023/11/13 12:57:19 違反報告リンク